定森ひかるが2024年第3回定例会の決算特別委員会で質問をしたテーマについて概要となります。後半は市民文化局、子ども未来局、教育委員会の質問になります。どのような問題意識で質問をしたのか、提案内容も含めてお伝えします。各質問は、札幌市議会のHPから録画映像を見ることができます。 2024年第3回定例会録画:https://sapporo-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=gikai_days_list&gikai_id=206
目 次
10/23 市民文化局「NPOと町内会等の協働を促進する「地域連携促進事業」」
地域連携促進事業とは
「地域連携促進事業」は、NPOが持つまちづくりのノウハウやスキルを地域に提供し、町内会や自治会などの地域団体と協働することで、地域課題の解決や活性化を図る取り組みです。
本事業は2015年に開始され、NPOが地域に対して具体的な支援メニューを提示し、それを希望する町内会等にNPOが派遣される仕組みとなっています。
近年では、自然災害時の避難支援、虐待防止・子育て支援、高齢者の見守り、地域交通の確保など、地域コミュニティの役割がますます重要になっています。一方で、町内会等の加入率低下や担い手不足が深刻化しており、多様な主体と連携しながら地域運営を支えていくことが求められています。
このような背景からも、NPOと地域が連携し、協力関係を深めることには大きな意義があります。
事業の現状と課題
本事業の昨年度の実績は過去最高の33件となりました。コロナ禍の影響で一時的に事業が停滞したものの、再び活発に活用されるようになっています。しかし、いくつかの課題も浮き彫りになっています。
1. 地域側のニーズが明確化されていない
現在、町内会等へ紹介されるのは事業に登録済みのNPOに限られています。しかし、町内会側がどのような課題を抱えており、どのような支援を求めているのかが十分に整理されていないため、NPOとのマッチングがうまくいかないケースもあります。
2. 登録NPOの分野に偏りがある
例えば、若い世代の担い手不足に悩む町内会が多い一方で、市内には100人以上の若者ボランティアを抱えるNPOも存在します。しかし、こうしたNPOが本事業に登録していないため、町内会との適切なマッチングが実現できていません。
3. NPO側の認知度不足/ニーズに応えられていない
地域とつながりたいと考えているNPOは多いものの、「地域連携促進事業」の存在を知らずに活用できていない団体も少なくありません。また、町内会等との関係構築に悩むNPOも多く、NPO側のニーズにも応える事業にする必要があります。
定森ひかるの「質問」と「提案」
これらの課題を踏まえ、地域連携促進事業の更なる充実を図るために、今後どのように事業を改良していく考えなのかを質しました。市からは、地域とNPOのニーズ等を把握して、双方にとって良い循環が生まれるような事業にしていくとの答弁があったところです。
定森ひかるからは、かつてコロナ禍で設立された「新型コロナ感染症対策活動団体支援協議会」のように、NPO支援団体・町内会・行政が協力して課題解決に取り組む協議体を平時から設置し、情報共有やマッチング支援を行うことを求めました。本事業がより効果的に機能し、地域の持続的な発展につながるよう、引き続き改善に向けて働きかけていきます。
10/23 市民文化局「市民意見を政策形成に活かす「新たな市民参加」の取り組み」
本市では、市民意見を政策形成に活かすための新たな市民参加の仕組みづくりが進められています。
市民参加の仕組みづくりの背景
昨年度より、秋元市長の諮問を受け、第5次市民自治推進会議において「市民意見を市政に反映するための市民参加の仕組みづくり」が検討されています。2024年第1回定例会での代表質問では、市長から、施策や事業を立案する前の段階で「市民のニーズや意見を把握し、様々な意見を持つ市民同士が議論するプロセスの重要性」が示されました。市民自治の促進という観点からも、行政が政策立案の初期段階から市民と一緒に考えていくことは極めて重要です。
成人式のあり方をモデルとした市民意向の把握
本年度の市民自治推進会議では、「施策・事業の立案や変更を考える前段階のプロセスの重要性」を検証するモデルとして、成人式のあり方が議論されています。本市の成人式は地域の青少年育成委員会が中心となり、各区成人の日行事実行委員会が企画運営を担っていますが、担い手不足や財源不足といった課題を抱えています。
そこで、市民意向をどのように把握したのか、その方法と成果、そして課題について質問しました。
市の答弁によると、今回の市民意向の把握では、SNSや紙の調査票を活用したアンケートを実施し、特にLINEを活用したことで、現役世代から多くの回答を得ることができたとのことです。これにより、スピーディーに傾向値を把握できるという成果があった一方で、市民への情報発信や共有の方法には課題が残ることが明らかになりました。迅速かつ低コストでアンケートを実施し、若い世代の意見を掘り起こす手法として、SNSの活用は有意義な取り組みだと評価できます。
市民同士が議論するプロセスの重要性
次に、市民同士が議論するプロセスをどのように設計し、どのような手法で市民の意見を政策に反映するのかを質問しました。
市政課題は多岐にわたり、専門性が求められるものもあります。また、直接的な利害関係がない場合、市民の関心を引き出すこと自体が難しく、どういった人を対象に何を議論するのかが重要です。
今回の成人式のあり方に関する検討では、市の答弁によると、いわゆる「ミニパブリックス」という手法を取り入れた試みが進められるとのことでした。これは、市民に適切な情報提供を行った上で熟議を重ねる手法であり、市民の理解を得ながら複雑な課題の解決を進めるために有効だと考えます。また、環境局でも「気候市民会議」という形で同様の手法を導入予定であり、こうした取組みを他の政策形成にも活かしていくことが求められます。
定森ひかるの「提案」
今回の成人式のあり方の検討を通じて、市民参加の手法として以下の点を提案しています。
1.SNS等のデジタルツールを活用した市民意向の把握を、他の施策にも広げること
LINEなどを活用したアンケート調査は、特に若年層や現役世代の意見を収集する上で有効であることが示されました。この手法を、成人式の検討にとどまらず、他の政策形成においても活用できるよう、具体的な指針を策定するべきです。
2.「ミニパブリックス」をはじめとした、市民同士が議論できる場の整備
単なる意見の収集ではなく、市民が対話を重ねながら意見をまとめる場の設計が重要です。特に、多様な世代や背景を持つ市民が参加できるよう、議論の対象や進め方を工夫する必要があります。すでに環境局では「気候市民会議」を予定しているため、他の施策にも展開できるよう、庁内での連携を強化すべきです。
3.市民参加の意義や手法を全庁的に共有し、他の政策立案にも活かすこと
今回の成人式に関する取組みは、市民参加の新たな可能性を示しました。この成果を単発の事例として終わらせず、市の事業全体に活用するため、効果や課題を整理し、庁内で共有する仕組みを整備することが求められます。
市民参加の仕組みづくりは、市民の声を的確に政策へと反映するために不可欠です。今後も、より開かれた市政を目指し、市民とともに考える場の充実を求めていきます。
10/25 子ども未来局「子育ての負担軽減と里親の養育経験に資する「里親ショートステイ」」
札幌市では、子育て家庭の負担軽減と里親制度の推進を目的として「里親ショートステイ」事業が進められています。この制度の現状と今後の課題について質問しました。
里親制度の推進と未委託里親の課題
国は2016年の児童福祉法改正により「家庭養育優先の理念」を掲げ、2017年の「新しい社会的養育ビジョン」において里親委託の推進を進めています。里親委託の推進は、社会的養護が必要な子どもたちに家庭的な環境を提供し、自立後も継続的な支援を受けられる仕組みとして重要です。
札幌市でも、里親支援体制の強化に取り組み、2019年9月に240組だった里親登録数が、2024年9月には442組に増加しました。これは大きな前進ですが、登録したものの子どもの委託に至らない「未委託里親」が一定数いるという課題が浮かび上がっています。全国的にも、未委託の里親は約7割に上るとの調査結果があり、登録後のモチベーション維持や養育経験の機会不足が問題となっています。
そこで札幌市における未委託里親の数とその理由、そして未委託里親に対する支援策について質問しました。
市の答弁では、未委託里親の多くは子どもの特性や相性、家庭の事情などによって委託に至っていないとのことでした。そこで、里親に対する支援の一環として、「里親ショートステイ」制度がモデル事業として実施されているとのことです。
里親ショートステイとは
里親ショートステイは、子どもを一時的に里親家庭で預かる仕組みであり、育児の負担軽減と里親の養育経験向上の両面で意義のある制度です。従来、ショートステイは児童養護施設や乳児院で受け入れていましたが、施設の空き状況に左右されやすく、安定的な受け皿の確保が課題でした。
こうしたなか、現在中央区・北区・厚別区の3区でモデル事業として里親ショートステイが実施されており、子育て家庭への支援としても広く期待されています。
そこで、この制度の実績と、それによってどのような効果が得られているのかを質問しました。
市の答弁では、受け入れる里親にとっては養育経験を積む機会となり、自信につながること、また、預ける保護者にとってはリフレッシュの機会となり、子どもに対してより受容的な関わりができるというメリットがあるとされました。また、里親家庭での預かりであるため、子どもにとっても養育環境の変化が少なく、安心感が得られるとのことです。
里親ショートステイを広げるための課題
里親ショートステイは非常に有意義な制度ですが、今後の拡大に向けて、制度を利用する側・提供する側の両方に課題があります。そこで私は、里親ショートステイを広く進めていく上での課題と対応策について質問しました。
市の答弁によると、制度の認知度がまだ十分でなく、市民や里親への周知が必要であること、また受け入れ体制の強化が課題であるとのことでした。
定森ひかるの「提案」
里親ショートステイは、子育て家庭の支援だけでなく、里親委託の推進や養育の質向上にも寄与する重要な制度です。これをより広く活用するために、以下の点を提案しました。
1. 10区展開を早急に進めること
現在はモデル事業として3区での実施にとどまっていますが、札幌市全体でこの仕組みを活用できるよう、10区展開を急ぐべきです。子育ての負担軽減が求められる家庭は多く、制度の充実が必要です。
2. 保護者の心理的なハードルを下げる取り組み
ショートステイの利用にためらいを持つ保護者も少なくありません。特に、里親家庭に預けることへの不安を解消するため、利用者の声を積極的に発信することや、相談窓口を設けることが必要です。
3. 里親への周知と支援強化
制度を活用する里親を増やすため、ショートステイの意義やメリットを広く伝え、未委託の里親が気軽に参加できる環境を整えるべきです。また、養育に関するサポート体制を強化し、受け入れ側の負担を減らすことも重要です。
4. 里親支援センターの設置
里親支援を強化するため、フォスタリング機関を「里親支援センター」として位置づけ、受け入れ調整の体制を整備することが求められます。2022年の児童福祉法改正により、フォスタリング機関を児童福祉施設に位置づけられるようになったため、これを活用すべきです。
里親ショートステイは、単なる一時的な預かりの仕組みではなく、里親制度全体の質の向上や子育て支援の充実につながる施策です。
今後、市全体での展開を進め、より多くの家庭がこの仕組みを活用できるよう求めていきます。
10/28 教育委員会「子ども達を守るための『いじめ対策』」
札幌市では、いじめによる重大事態を二度と起こさないために、2024年4月に「札幌市いじめ防止基本方針」を改定し、新たな取り組みを進めています。いじめ対策の実効性を高めるための現状と課題について質問しました。
いじめ対策の基本方針と学校の組織対応
本市では、昨年度発生したいじめの重大事態を受け、いじめを未然に防ぎ、深刻化を防止するために「札幌市いじめ防止基本方針」の改定が行われました。特に、学校ごとに設置されている「学校いじめ対策組織」の機能強化が重要なポイントとなっています。
そこで、方針改定後、学校いじめ対策組織がどのような取り組みを行っているのかについて質問しました。
市の答弁によると、校長を責任者として、学校全体でいじめの早期発見・早期対応を行う体制が強化されたとのことでした。具体的には、いじめ対策組織の会議を月1回必ず開催し、情報共有する機会を確保することで、いじめの深刻化を防ぐ取り組みを行っているとのことです。
教育委員会の役割と学校への支援
学校いじめ対策組織の強化は前進ですが、いじめ防止策は継続的に見直し、実効性を高めていくことが必要です。各学校の取り組みが形骸化しないように、教育委員会が定期的に確認し、必要な支援を行う仕組みを強化することが求められます。いじめ防止の取り組みを効果的に進めるためには、学校が適切な対応を継続できるよう、教育委員会の支援が不可欠です。
そこで、教育委員会としてどのように学校を支援しているのか、質問しました。
市の答弁によると、教育委員会では学校への研修を通じて、いじめ防止基本方針の理解を深めるとともに、いじめ対策の具体的な手法について指導を行っているとのことでした。また、各学校の取り組み状況を継続的に把握し、必要に応じた助言や支援を行いながら、学校が適切に対応できるようサポートしているとのことでした。
学校外の支援体制と多機関連携の必要性
いじめの事案によっては、学校だけでは対応が難しいケースもあります。例えば、先日公表された「重大事態調査報告書」では、いじめが複数の学校にまたがり、学校外の民間の活動も関わるなど、関係者が多岐にわたる事案でした。いじめによる深刻な事態となるのを未然に防ぎ、早期にいじめに対応をしていくには、学校や教育委員会内だけでは対応が困難ないじめ事案に対しても対策を進める必要があります。
そこで、対応が困難ないじめの事案に対して、学校や教育委員会としてどのように取り組んでいくのか、質問しました。
市の答弁によると、緊急性の高い事案や対応が困難なケースでは、学校と教育委員会が連携し、弁護士や警察OBなどの専門家とともに対応を進めるとのことでした。また、「札幌市いじめ対策連絡協議会」を複数回開催し、関係機関と施策や現状を共有しながら連携を強化しているとのことでした。対応が困難ないじめの事案に対して、様々な専門家や関係機関と連携し、学校・家庭・地域で未然防止・早期発見・適切な対処に取り組んでまいりたいということです。
定森ひかるの「提案」
札幌市のいじめ防止対策をより効果的なものとするため、以下の点を提案しています。
1.学校いじめ対策組織の運営状況を定期的に確認し、教育委員会が積極的にサポートすること
いじめ対策の取り組みが形骸化しないよう、各学校の状況を適切に把握し、必要な支援を行うことが重要です。
2.学校が単独で対応を抱え込まないよう、教育委員会が積極的に連携を支援すること
学校だけでは対応しきれない事案に対し、教育委員会が関係機関と連携し、支援を強化するべきです。
3.いじめの重大事態を防ぐため、学校外の支援体制を強化すること
いじめは学校内だけでなく、SNSや地域社会でも発生します。町内会、民間団体、児童相談所、子ども家庭センターなどと協力し、早期発見・早期対応を実現するべきです。
4.学校・教育委員会だけでなく、市全体でいじめ対策を強化すること
いじめ防止のためには、学校や教育委員会だけでなく、市の関係部局が一丸となって取り組むことが必要です。関係機関が連携し、子どもを守るための体制を強化するよう求めます。
いじめは被害を受ける子どもにとって深刻な影響を及ぼします。札幌市の新たな取り組みが実効性のあるものとなるよう、引き続き議会で訴えていきます。