2025.03.28

2025年第1回定例会のご報告③ 予算特別委員会【後半】

定森ひかるが2025年第1回定例会の予算特別委員会で質問をしたテーマについて概要となります。デジタル推進戦略局、市民文化局の質問を掲載しています。どのような問題意識で質問をしたのか、提案内容も含めてお伝えします。各質問は、札幌市議会のHPから録画映像を見ることができます。
2025年第1回定例会録画:https://sapporo-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=gikai_days_list&gikai_id=211

03/13 デジタル推進戦略局「区役所窓口の利便性向上に向けた『BPRと行政DX推進室』」

札幌市では、市民の利便性向上と行政サービスの質の向上をめざし、区役所窓口における業務の抜本的な見直し(BPR)と、それを基盤とした行政DXの推進が進められています。私は3月13日のデジタル推進戦略局に対する質疑で、窓口業務の改善状況と、令和7年度に設置予定の「行政DX推進室」の役割について質問しました。

区役所窓口の業務見直し(BPR)の進捗

我が会派ではこれまでも、窓口のDXを進めるにあたり、業務そのものを見直すBPRが不可欠であると主張してきました。市民にとって分かりやすく、使いやすい窓口とするには、業務の標準化・簡素化といった土台を整えた上で、デジタル技術を活用していくことが重要です。2023年には、窓口業務のBPRを検討するワーキングチームが設置され、申請書の様式見直しなどアナログな面からの改善が始まっています。

そこで、これまでの取組によって具体的にどのような改善が図られたのかを質問しました。

市からは、マイナンバーカード関連の3つの申請を1つの様式に統合することが可能となり、すでに1区で実証を進めているとのことでした。成果が確認できれば、早期に全市展開を目指すとのことです。

申請書の統合や記載項目の削減といった取組は、手続きにかかる時間の短縮や職員の負担軽減にもつながるものであり、実効性のある第一歩として評価できます。

今後の進め方と中長期的な視点の必要性

こうした成果は一定の前進ではあるものの、「繁忙期の待ち時間20分短縮」など、より大きな目標の達成には、引き続き抜本的な業務改革と、標準化を前提としたシステム導入が必要です。また、区役所の建替えが進む中で、個別にDXを進めた場合、サービスの統一性が損なわれるおそれもあります。

そこで、今後のBPRの進め方と、業務標準化・DX導入をどのように展開していくかを質問しました。

市からは、業務の平準化を図りながら、デジタルレジの導入による集金業務の利便性向上なども検討中とのことでした。また、全国的な標準化動向も踏まえたシステム導入を目指すとのことです。

全庁的なDX推進に向けた行政DX推進室の役割

こうした区役所窓口のBPRは、行政DXの中核をなす取組であり、今後は全庁的な展開も求められます。一方で、現場からは「DXやBPRについて相談できる相手がいれば進めやすい」といった声も多く、支援体制の強化が必要です。

そこで、来年度設置予定の「行政DX推進室」がどのような役割を担っていくのかを質問しました。

市からは、行政DX推進室では、部局横断的な支援、生成AIの活用、人材育成などを通じ、全庁的なDXの底上げを進めていくとの答弁でした。

定森ひかるからの「提案」

行政DXを着実に進めていくためには、制度や体制の整備にとどまらず、「全庁で実効性を持って活用される仕組み」を築いていくことが不可欠です。私からは以下の点を提案しました。

1.戸籍住民課にとどまらず、福祉や子育てなどを含めた区役所全体の窓口業務を横断的に見直すこと
2.行政DX推進室が、各部局間での情報共有と成功事例の横展開を支援する役割を担うこと
3.業務改善に向けた意識と実践が全庁に広がるよう、職員一人ひとりが「市民目線」での業務を考える風土を醸成すること

行政DX推進室が旗振り役としての役割を果たし、部局横断の行政DXが進むよう注視してまいります。

03/17 市民文化局「『札幌文化芸術交流センターSCARTS』の相談機能の強化」

札幌市では、文化芸術を活かしたまちづくりを進める中で、市民交流プラザの一施設である「札幌文化芸術交流センターSCARTS(スカーツ)」は、創造活動を支援する重要な拠点としての役割を担っています。3月17日の市民文化局に対する質疑で、SCARTSの稼働状況や相談機能の現状、そして今後の強化に向けた取組について質問しました。

稼働率と相談件数の増加

SCARTSは2018年の開設以来、スカーツコートやスカーツモールなど多様な設備を備え、市民やアーティストが幅広い分野で活用できる施設として整備されてきました。近年はコロナ禍の影響を受けつつも、2023年度の稼働率は87.9%と高い水準となっており、年間約3,000件の貸館利用があるとのことです。

また、文化芸術に関する相談業務についても、2019年度の65件から2023年度は140件に増加しており、特に「活動場所の確保」や「助成金申請」に関する相談が多く寄せられているとのことでした。

相談件数の増加=支援の充実、とは限らない

相談業務の実績が増加していることは一定の前進ですが、SCARTSの稼働日数(約350日)に対して年間140件という件数は、2〜3日に1件の相談にとどまります。2021年に実施された市の調査では、市内のアーティストの約97%が「資金調達」「活動場所」「人材確保」などの課題を抱えていると回答しており、こうした実態から見ると、相談機能が十分にニーズに応えられているとは言い切れません。

そこで、SCARTSが市民やアーティストの課題により的確に対応するには、待ちの姿勢ではなく、アウトリーチ型の支援や、専門的な相談体制の強化が必要であると考え、今後の方向性について質問しました。

市からは、相談機能への潜在的なニーズは高いとの認識のもと、助成金説明会後の個別相談会や、相談ニーズに応じた専門家による講座などを実施しているとのことです。今後は貸館の打合せ時などの機会も活かしながら、相談への導線を拡充するとともに、職員の知見の蓄積や専門性の向上を通じて、相談対応の質の向上を図っていくとの答弁がありました。

定森ひかるの「提案」

SCARTSの相談機能を実効性あるものとするためには、利用者が自ら相談に来るのを待つだけでなく、「必要としている人にどうつなげるか」という視点が求められます。私は以下の点を提案しました。
1.貸館時やイベント開催時など、既に来館している利用者との接点を活かし、課題把握や相談促進につなげること
2.助成金や活動拠点の確保など、専門性が求められる相談に対応できるよう、多様な専門人材を活用した支援体制を構築すること
3.SCARTSの特性を活かし、施設内での情報提供やマッチングの場を広げるなど、相談機能の充実と施設活用を一体で進めること

SCARTSが今後、より多くの市民やアーティストの創造活動を支える拠点となるよう、支援機能の強化と体制の整備が進むことを期待し、引き続き議会から取り組みを後押ししてまいります。

03/17 市民文化局「地元人材との連携による『国際芸術祭』」

札幌国際芸術祭(SIAF)は、芸術文化を通じて都市の魅力を発信する重要な文化事業です。3月17日の市民文化局に対する質疑において、2027年開催に向けた市民参加の取組や、地元人材との協働による運営体制の強化について質問しました。

SIAF2027に向けた2024年度の取組について

SIAF2024では、来場者満足度は高かったものの、市民の認知度が一度の開催で定着するのは難しく、次回までの3年間で関心をどう持続させるかが課題とされています。私は、芸術祭への市民の継続的な関わりを確保するためにも、開催年以外の取組が極めて重要であると考えます。

そこで、SIAF2027に向け、2024年度にはどのような取組を行ったのか、質問しました。

市からは、2024年度は、開催年以外からの芸術祭の普及を目的に、雪まつり会場でのプレイベントを実施し、親しみやすいメディアアート作品の展示や、市民ボランティアによる作品ガイドを行ったとのことでした。また、小学校の出前授業で子どもたちが制作したデジタルアートを大画面に投影し、多くの来場者の注目を集めたとのことです。さらに、教育関係者や企業と連携し、ドローンや生成AIを活用したワークショップなど、今後のプログラム開発に向けた実証も行われました。

冬のイベントと連携したこうした体験型の取組が、市民の芸術祭への関心をつなぎとめる有効な手段であると実感しています。

SIAF2027に向けた2025年度の準備と新体制の意義

今年2月には、SIAF2027の方向性とディレクター体制が発表され、これまでのゲストディレクター制から「ディレクターチーム制」への移行が示されました。新体制では、小川秀明氏が統括を担うとともに、札幌在住の3名のディレクターが参画する形となり、地域との結びつきを強めた運営が期待されます。

そこで、この新しい体制のもと、芸術祭開催の1年前となる2025年度には、どのような準備を進めるのか、質問しました。

市からは、2025年度は、SIAF2027のテーマやコンセプトをできるだけ早期に決定し、それに基づく展示やプログラムの展開に向けて、主要会場の選定などを進めていくとのことです。また、地元人材を積極的に登用し、専門スタッフやキュレーターとともに運営体制の強化を図るとの方針が示されました。さらに、2024年度の取組を検証しつつ、引き続き関連イベントや広報活動を行い、冬をピークとした機運の醸成に努めるとのことでした。

定森ひかるの「提案」

SIAFを札幌に根付いた文化事業として定着させていくためには、開催年以外の取組の充実と、地元との継続的な連携が不可欠です。私は以下の点を提案しました。
1.雪まつりなど既存イベントと連携し、芸術祭への市民参加の機会を継続的に確保すること
2.地元ディレクターや専門人材の力を活かし、札幌の文化資源やネットワークを最大限に活用した事業展開を図ること
3.新たな体制のもと、これまで関与の少なかった市民層やアーティストにも参画の機会を広げる仕組みを構築すること

多様な市民が芸術に触れ、参画できる国際芸術祭となるよう、引き続きその実現に向けて議会から取り組みを後押ししてまいります。